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建物見学会_c0204394_0362818.jpg先週と今週、立て続けに建物見学を行いました。
先ずは犬山。
 先週の25日、城下町内に建つ住宅型老人ホーム「SARA HOME」を見学しました。町に溶け込むような外観の有料老人ホームで、お洒落なデザインです。入居者は近在の方が多いとのことでした。まだ営業を始めてはいませんが、カフェが併設され地域交流の仕掛けも設けられています。
 その後向かったのは、工事も追い込み段階の犬山市新庁舎建替工事現場。今年10月の完成予定です。免震構造を採用し、防災拠点としての機能も担います。市民開放施設を設け、休日夜間にも開放可能とのことです。工事中での市民見学会の開催など、開かれた公共施設づくりが進められています。

 建物見学会_c0204394_037347.jpg昨日の4日は、一宮市民病院 南館Ⅱ期工事を見学しました。工事はほぼ完成しています。4床室の個室的多床病室。手術室と集中治療室の充実、母子医療センターの充実、検査機能の充実。防災機能兼用のドクターヘリ対応ヘリポートを設け、救命救急センターの充実などを目指しています。工事は今後、新病棟に機能を移転し、既存館の改修、旧本館の撤去、駐車場整備が進められるとのことです。
2009.9
感性を育む空間 ~頭のよい子が育つ家~_c0204394_23375466.jpg平成21年5月10日(日)、三岸節子記念美術館において、講演会とトークディスカッションを行いました。
第1部の講演会は、 「頭のよい子が育つ家」の著者のお一人、渡邊朗子さんのお話、第2部のトークディスカッションは、渡邊朗子さん、元外交官で現在は子育ての真っ最中でもある語学教師の杉本尚美さん、そして建築家としての立場で一宮支部長が加わり対談を行いました。
託児室を用意し保育士の待機も依頼しました。建築家が催すセミナーなので託児室はアート空間をと構想しましたが、準備不足の為建築展とともに断念しました。

 まずは講演会です。「頭のよい子」とは「心のよい子」。その為には、子と親の気配を感ずる関係を育むことが大切。情報を共有する大きな掲示板や、学習・家事・書斎と多目的に使える大きなテーブルなど、子と親の気配の感ずる仕掛けや回遊できる空間が望ましいようです。自然と対話する縁側、子供の成長を記録する柱の傷など、自然環境との気配や家族の歴史との気配を感ずる仕掛けが人の感性を育むとのこと。住まいは完成させないで、不具合や家族構成の推移に応じ手直しを行うことで、多くの事を学ばせてくれるとのことです。
 続くトークディスカッションでは、パネラーの杉本尚美さんより、オランダ滞在での住まいと街並みの話題を語っていただきました。ワークシェアリング発祥の地とされるオランダは共働き夫婦が多く、その収入は0.75×2人=1.5。残る0.25は子育て、そして0.25は住まいづくりに費やすとのことです。ボートを所有する世帯も多くサマータイムには家族で6時頃からセーリングを楽しみ、お金を使わず子供と過ごすとのことです。会場からの質問をネタに3者からの意見交換を行い、最後に「頭のよい子」とはどんな子かを尋ねました。自らの頭で考え行動を興せる子(谷)、順応性・協調性・解決能力のある子(杉本)、自分だけでなく廻りも幸せを育んでいける子(渡邊)と、それぞれの所感が述べられ終演しました。
 子供の人格の形成に少なからず影響のある住まいや建築について、改めて重責を感ずると共に建築の発注者にも認識を求めたいと感じました。建築の新たなテーマを突き付けられた想いです。
液状化地盤と地盤改良_c0204394_22355826.jpg
先週の続きです。

先月の7日。岐阜大学の地盤工学の先生による市民公開セミナーを開催しました。
液状化の恐れのある地盤における、建物基礎への対策と考え方についてです。
そのセミナーで認識したことです。以下に記します。

昨今、住宅の現場において地盤調査をすると言えばスエーデン式サウンディング試験。
住宅の建築技術者の多くは、どんな地質でもこの試験方法を単純に採用しています。
でも構造の専門家たちは、この試験はあまりあてにならないものと認識しています。
この試験方法は、適する地盤と適さない地盤があるのです。

西尾張地域でスエーデン式サウンディング試験をすると、
大抵は地盤が緩く、地盤改良の必要有りと判断されます。
この地盤改良が、西尾張地域のような液状化の恐れのある地盤ではくせ者なのです。
大地震時に液状化現象が発生すると、重いものは沈み、軽い物は浮き上がります。
つまり、建物は沈み浄化槽や雨水枡などは浮き上がってくるのです。

建物の沈む程度やその対策は、高い精度の地盤調査をしなくては判断できません。
そんな意味で、スエーデン式サウンディング試験は少々物足りない試験であり、
地盤の表層改良や柱状改良も疑問の残る工事なのです。
この点を理解した上で適切な地盤調査を行い、適切な地盤補強あるいは基礎補強の
判断をしなくてはなりません。
「液状化現象」をご存じでしょうか。
砂の堆積する地盤で地中の水位が高い地域は、大地震時に砂層の地面が流動化して「液状化現象」を発生させます。
西尾張の地盤はまさにこの条件に合致します。
木曽川により運ばれた砂が厚く堆積し、木曽川の伏流水がさほど深くない地盤内を流れています。
西尾張の東北方面は砂の堆積厚も浅く、さほど心配はありませんが、西南に向けて徐々に堆積厚が深くなり、液状化が懸念されます。

かつての木曽川は堤防など無く、洪水の度に自由に流れを変えていました。
そんな中にも、水に浸かることの少ない中州が形成されていました。
今でも地名に「島」とか「中島」とか呼ばれている場所はそんな名残です。
真清田神社などもそんな島の上にあったのでしょう。
神社や古くからの集落がある一帯は、周囲に比べれば少し高い位置にあり、液状化も軽減され安定した地盤なのかもしれません。

土地を購入する折りには大いに配慮すべき事なのですが、現実にはあまり重要視されていません。
大地震時になってはじめて、事の重大さに気づくのでしょう。
現代人の悲しい消費行動です。
明治・大正・昭和と繊維で栄えた一宮の近代史を象徴する建物が、尾張一宮駅周辺に数カ所残っています。この時代に建てられた建物を「近代建築」と称しています。戦災を生き抜き、戦後の経済成長でも頑なに建て替えを否定し、今に残る建物です。その内の2棟が、今でも一宮市役所として使われています。
一宮市役所本庁舎旧館(北館)と西分庁舎です。

一宮市役所本庁舎旧館&西分庁舎_c0204394_23591350.jpg昭和5年竣工の一宮市役所本庁舎旧館(北館)は、オープンカウンター方式を日本で初めて採用した建物であることが判明、市民に開かれた自治体を目指すが如く一宮市の近代史にとって貴重な建物です。鉄筋コンクリート構造がまだ貴重な時代、学校に採用した都市、病院に採用した都市と様々な中、一宮市は市役所に採用しました。その後戦争へと推移するにつれ鉄の使用が制限され、戦後の復興まで鉄筋コンクリート構造で作られる建物は激減します。そんな戦前の一時に鉄筋コンクリート造で建てられた市役所として、たいへん貴重な建物です。戦後の焼け野原の中に、残されるように建つ一宮市役所の屋上に昭和天皇が来訪し、当地の早期の復興を願ったとのことです。

一宮市役所本庁舎旧館&西分庁舎_c0204394_23561561.jpg一宮市役所西分庁舎は大正13年の竣工。設計は鈴木禎次氏。鶴舞公園の奏楽堂・噴水塔、旧名古屋銀行本店(三菱東京UFJ銀行貨幣資料館として使われていた建物)、松坂屋本店、半田の中埜半六家別邸、桑名の諸戸精分邸洋室、豊田の豊田喜一郎邸等々、名古屋を中心に活躍した鈴木禎次氏は、数多くの銀行建築も手掛け、そのひとつが旧名古屋銀行一宮支店、今の一宮市役所西分庁舎です。一階の天井は多くが隠れてしまっていますが、一部に天井や梁のデコレーションを見ることができます。

一宮市役所本庁舎旧館(北館)と西分庁舎は、繊維都市一宮の元気な頃の歴史を物語る建物です。一宮モーニングの喫茶店などと組み合わせれば、オンリーワンの一宮のまちづくりが叶う歴史遺産なのです。